グレイトフルデッドのピークと言われている時期は 人によって違いますが、一般的には72年〜74年、77年、90年春のツアーだと言われています。個人的には80年から83年くらいも加えてほしいところですが、公式リリースの熱量から見ても人気なのは70年代の音源に間違いないでしょう。
『Spring 1990』
内容:★★★★★(すべての音楽ファンに捧ぐ)
その“70年代推し”の中で非常に浮いている90年春ツアーですが、ツアー後すぐにライブアルバム『Without A Net』が発売されている通り、バンド自身も「上手く行った」といった実感があったのでしょう。残念ながら90年7月にブレント(鍵盤)が亡くなってしまうのですが、1989年9月以降はそのブレントが絶好調でした。相乗効果でジェリーの歌もギターもノっています。1989年は公式でも比較的多くリリースされていますから7月あたりと比較してみてください。
↑『Spring 1990』のおまけ。レプリカチケット他
89年秋ツアーは9月29日から始まっています。秋ツアー以降春ツアーまでの公演数を確認してみます。
89年9月 2公演
89年10月 15公演
89年12月 8公演
90年2月 3公演
公式に発売しているものは、10月8日と10月9日のハンプトンは『Formerly The Warlocks』としてCD化、10月16日は『Nightfall Of Diamonds』としてCD/LP 化されています。10月26日は『30 Trips Around The World』に収録。
この26日の30分近くある「Dark Star」はMIDI期の傑作とされています。(アーカイブのリンクを貼っておきます)
https://archive.org/details/gd1989-10-26.125695.mtx.dusborne.flac16/gd89-10-26s2t04.flac
この時期の音源の大半はサウンドボード音源で出回っているので興味がある人は確認してみてください。特に89年10月は90年春ツアーに劣らずの充実期だったと思います。(数年以内に89年10月の残りの音源がBOXとして出るのではないかと予測&期待)
そして90年スプリングツアーが始まるのですが、デッドの公式が早々とBOXで発売したように、本当に素晴らしい内容となっています。気持ちよさ、多幸感という点では間違いなくベスト!確かに70年代と比べると演奏がコンパクトになりがちですが、ジャムバンドとしての面白味を十分に残しています。
その4月3日までの16公演分が、『Spring 1990』『Spring 1990 The Other One』というBOX2種に加え、『Dozin’ At The Knick』にバラバラにされてしまった3月24日の残りが収録されています。
あと3月15日は単品で『Terrapin Station Capital Centre』として発売。
3月24日はどうにかまとめて再発売してもらえませんかね。
ショウの単独レビューは今後ゆっくりしていくつもりです。
89年のパワーバランス
この時期ですが、『Built To Last』(1989)でもはっきりと表れていますが、ガルシア3曲、ボビー2曲、ブレント4曲と、随分ブレントに頼っています。そのガルシアとボビーの曲が意外とクセになるんですね。超ご機嫌な「Foolish Heart」は、個人的には「Hell In The Bucket」と併せて後期デッドの大好きな2曲。
ボビーのちょっとハードロックな「Victim Or The Crime」は『Without A Net」にも収録されていました。初めは今一だと思った「Picasso Moon」は、反復して聴いているうちにちょっと中毒になる。ちなみにこの2曲は、演奏頻度も高いせいか勿論うるさ方のデッドヘッズの目の敵にされています(笑)。
逆にブレントの曲は…熱唱系の彼が書くだけあって王道アメリカンロックといった趣き。デッドの音楽性とは方向が違う。「Blow Away」は実は意外と好きなのですが、「We Can Run」「I Will Take You Home」は、単純にポップスとしても凡作というか、あまり印象に残りません。「We Can Run」はジェリーの超メロウなイントロに騙されてつい聴いちゃう。ブレント曲なら別アルバムの「Easy To Love You」が1番デッドにフィットしているかな。スタジオ版のように力まずに爽やかに歌ってくれればなぁ。でもライブではブレント作品が意外といいアクセントにはなっています。演者としてのブレントが本当に素晴らしいことは言うまでもありません。
次回以降不定期でこの89年秋以降から『Spring 1990』までの音源を取り上げていくつもりです。
(K)