音国史(中国史と音楽レビュー)

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JSD Band / ST (2nd)

ブログの更新が等閑になりました。ちびスケ(0歳)が家で大暴れしていてLed Zeppelinは流石に大音量で聴けないし、仕方ないのでクラシックを流していましたがストレスマックス(笑)。ちびスケにはずっと『ミサ曲ロ短調』でひたすら啓蒙...ではなく英才教育を施しつつ、僕自身は、冬といえばトラッドの季節ということでまた昔のCDやらレコードを引っ張り出して聴き始めました。

フィメールフォーク?知らない子ですね

UKフォークロックには「三美神」なる呼称で呼ばれているアルバムがあり、テューダーロッジ、スパイロジャイラの3rd、メロウキャンドルがそれに当たる訳ですが、もう一つの三強が存在しています。

それはエレクトリックトラッド三強(勝手に呼称)で、フェアポートの『フルハウス』、ジャックザラッドの『The Old Straight Track』、そして今回取り上げる『JSD Band』になります(誰が決めた?ラビリンス?)。まあ蒸し暑そうなトラッドロックですね。

アルバムレビュー

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JSD Band / ST

内容:★★★★

CDレア度:★★★(中々見ない)

JSD Bandといえばリーガルゾノフォンから出した『Country Of The Blind』が名盤として名高いのですがあちらは非常に優しい、ちょっと畏まったアルバムでした。最高の「くよくよするなよ」カヴァーが入っています。しかし名盤とはいえ『Heron』の1stほどチヤホヤされることも無く、ひっそりと道の横に佇む名盤といった感じ…JSD Band自体が昔からそこまで人気が…ない?今回の2ndは1999年にやっとCD化されたと思いきやそれ以降再発なしの廃盤状態。名作とされているはずの1stに至っては正規盤なし(ですよね?)。

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もし1stの後に3rdが発売されていたら、失礼ですが「一発屋」くらいの扱いで終わったと思うのですがどう考えてもこの2ndが圧倒的に熱い!スコティッシュ達が焚き火を囲んで宴会を開きながら爆音で演奏しているといった感じで、優雅でありつつも下品で粗野な感じが良い。それはボーナストラックの「Sara Jane」の再録音版を聴けば、あんなに可愛らしかった曲が、濁酒を飲みながらがなり立てるように歌っている。静の1stと動の2nd、この2枚でJSD Bandは(個人的に)UKフォークの代表格に出世したのでした。

開眼(本性を露わにしただけ)したバンド

このアルバムも当時流行りの、ボブディランやオリジナル曲を数曲+トラッドという構成。A面の頭曲「Open Road」はギターのショーンのオリジナル。B面は「Going Down The Road」なので「Open Road」もちょっとオールディーズな雰囲気を意識したのかもしれません。「Going Down The Road」はグレイトフルデッド でお馴染みですが、これが大好き。実はグレイトフルデッド より先にUKフォークにハマったので、GDTRFB(デッドのセトリ表記の際の略称)はこちらが先。憧れの亜米利加にいなたさが加わった本当に楽しいアレンジでこの曲だけは20年以上愛聴しています。

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さて、肝はトラッドのパートですが、あの「As I Roved Out」が超ドライブしています。June Tabor他様々な歌手が取り上げていますが全くバージョンが違います。この変遷については追い切れていませんが、このドライブする感じこそエレクトリックトラッドの真髄であり、この曲によってこのアルバムがエレクトリックトラッド有数の名盤に押し上げられたといっても過言ではありません。Ladの「Oakey Strike Evictions」並みの衝撃を受けました。

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大曲「Johnny O’Braidislea」(Johnny The Brine)はかなりシリアスで寒々しい雰囲気になっています。この曲を含めて彼らのトラッドは歌詞を多少改良していますが、かっこいいアレンジで押し切っています。それも名盤たる特権と言えましょう。この曲がこのアルバムでは白眉です。

お決まりのジグとリールのメドレーも両面共に入っています。ジグの後にシリアスな曲を持ってくるというのはもはや様式美なのかも知れませんね(汗)

最後に楽しい「Groundhog」で締めるというのが楽しくていいね。Steeleye Spanあたりだと暗くて重い大曲を持ってきそうな感じですが、そこがJSDバンドらしいのかも知れません。

トラッドロック最高峰

もう何百回と聴いているアルバムですが、繰り返し聴いても全く飽きません。別に何か深みがあるとかそういうことではないのですが(笑)、時々自分にフィットするアルバムに出会えるのも音楽漁りの楽しみ。僕の場合はUKフォークやフォークロックにそういうアルバムが多い気がします。

因みにCDは廃盤と言いましたが、ユニオンで680円くらいで叩き売りされていたのを買った覚えがあります。ここら辺のジャンルはワールドミュージックと隣り合わせの、常にマイナーな扱いでCDであれば大体安く買えるので個人的には非常に助かっています。

LPは日本版も出ているようですが、僕はUKオリジを擦り切れるほど聴いてしまい、もう一枚買おうか検討中。このCDがあれば買う必要はないと思いましたがA面B面という構成をはっきりと意識して曲が配置されているのでやっぱりレコードで欲しい。

それにしても映えないジャケットだことよ。

 

 

(K)